むかし、むかしのことでありました。 蛇が蛙を呑もうとして三川村の方から追いかけて来ました。蛙は一生懸命に逃げて、なんとかして蛇の目から逃れようとしたが、蛇も執念ぶかく、何処までも追って来ました。そして蛇園の村も通りすぎて村はずれまで来た時は、すっかり疲れて蛙は死んでしまいました。また蛇の方も蛙に追いつくことが出来ず、少し手前で疲れて動けなくなり、これも死んでしまいました。
蛇園村の人達は哀れに思って、それぞれ死んだ処に蛙塚と蛇塚を築いて石を立て弔ってやりました。 それから幾十年か過ぎてのこと、蛇塚のある畑の持ち主が耕すのに石が邪魔になるといって、蛇塚の石を普門院に移してしまったら、其の後そこの家では運が悪くなって、すっかり貧乏になってしまいました。主人は妻子とも別れて暮していましたが、病気になって困っていました。
余り哀れなので、村内の親類の者が占者に占ってもらったら、蛇塚の崇りで、それは蛇塚の石をお寺の便所の処に置いてあるためだと言われたので、早速普門院に行ってみたら、占者の言った通り石は便所の処にありました。そこで、よく洗って道の四辻の処に持ってきて建てなおしてやったが、間に合わなく病人は亡くなってしまい、その家は遂に滅びてしまったと云うことです。