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御祈願は雷神社へ

〒289-2616 千葉県旭市見広1371番地

山の神の大番HEADLINE

 正月は五日を過ぎないうちは、山仕事をしてはならぬと老人たちはかたく守って、若者達にもそうさせようとして居りました。  昔から、五日の日は山の神の大番というて、山の神様達が酒盛りをする日で、もしこの日に山に入って山の神様に見つかると戻ることができないと云われた。正月はこの日まで何の仕事もしないで、此の日は初めて藁仕事をはじめる日で、一年間に使う井戸綱を打つ日と定められて、車井戸のある家では隣近所より助けられて、縄をないそれを幾本も撚るのでありました。  ところが昔、岩井の村にある頑固な男があって、家人のとがめるのも聞かず、「山の神の大番なんてなんの、かまうものか」と出かけて行きました。去年の暮れに仕事が残って、もう半日もあれば終わる山の仕事でありました。 夕方近くなっても男が戻って来ないので、みんな心配だし、隣近所の男達をたのんで、さがしに行くことになりました。男達も気味悪いが、行かないわけにも行かず、切残しの山に行きました。 見つかった男は、仕事はまだ始めなかったらしく、山に着いたばかりのようで倒れていました。気絶していたので、急いで背負って戻り介抱したら、ようやく正気付いた。どうしたかと皆が尋ねたら、思い出すように語るには、山に着いたら大勢の人声がするので不審に思い、山の真中まで行ったが人はどこにも見えなかった。その時、後から襟頭を何者かにつかまれたと思うと、すっーと高くつり上げられて、どしんと落とされ、それきり何も覚えていなかったという。 またこういう話も伝わっています。他の人でありましたが、やはりこの日山に行ったら、大勢の人が車座になって酒盛りをしていて、その中の一人は高い大きな鼻であった。この人がこっちに来い呼ぶのでこわごわ近よると、酒をすすめられ、酔いつぶれるまで飲ませられて、迎いの人が行くまで戻ることが出来なかったということです。     《注》山の神の大番は八日という処もあったという。