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御祈願は雷神社へ

〒289-2616 千葉県旭市見広1371番地

天狗の萱上げHEADLINE

 むかし、むかし、岩井不動堂の周りを、毎晩のように真夜中に、どんどんと足音がするという話が出ました。初めのうちは、願をかける人がお百度を踏みに来るのだろうと思う人が多かったのですが、近くの人達がほんとに不思議だと語るので、若者達がそっと見に行くことになりました。 ある夜のこと、二、三人の若者が観音堂の裏に隠れていて、本堂に音がしたら行って見ることにして隠れていました。 音がするかと長い時刻がまんして待っていました。今夜は出ないかもしれないと語り合いつつもう少し、と待っていたら、急に本堂に足音がしました。それは高下駄をはいたような足音で、それも二歩あるいては一歩は足音を立てないような歩き方で、本堂を回るのが足早な音でありました。若者はそっと見に行ったが、人影もなく近づくと止んでしまいました。 次の夜も行って見ると、足音が始まる、そっと行ってもやはり止んでしまい、何の影もなく、時には本堂裏の大滝の音まで、ぴたりと止むこともあってみんな不思議がりました。  その頃本堂の屋根が大変やぶれて屋根替をすることになりました。お堂が高いので、四段にも五段にも足場をかけて、萱をたくさん集めて、職人も大勢あつまり、それはそれは大変な普請でありました。手伝いの村人達も町内割りに毎日出ることになったが、素人達は高い処になれないので怖れて、萱を持って上に登るのをやりかねていました。 誰だか、こうしていては仕事にならないと萱を持って登り始めました。下を見るからいけない、上ばかり見て上がれば怖しいことはないと、萱を持って上がっていくと、持ったか持たないかわからない程軽く上げることが出来ました。他の者も二人三人とまねて登れば、みんな軽い、不思議に軽いと言いました。ひとりでに上がるのではないかと思う程どんどん上がって、葺く方もはかどりました。  なんと不思議な事もあればあるもんだ、これはきっと天狗が手助けしてくれたに相違ないと皆語り合いました。