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御祈願は雷神社へ

〒289-2616 千葉県旭市見広1371番地

西念地蔵HEADLINE

 西念さんが何歳になるかを、村人達には知っている者は有りませんでしたが、三十歳近くには見えました。坊さんではあってもなかなかの美男子で、近くの女達の注意を引かずにはおきませんでした。 正蔵院に来る前、何処に居ったかも多くの人は知りませんでした。誰いうとなく男達の間には、この村に来る前に居った所々で女を犯しては、移り移ってこの岩井村に来たのだという話もありました。 二年余りは表だった問題も起きませんでしたが、其の内に近所の某の妻と懇意のようだという人がありましたが、それから間もなく、これも近くの物持ちの娘でおしんさんとねんごろになったという噂がパッと立ちました。おしんさんには縁談もあるところでもあり、おしんさんの父親の怒りはひととうりではありませんでした。それにまた黙っていなかったのが村の若衆達でありました。確かめてみるということになりました。果たして、密会の現場を若衆達に見つかってしまいました。村の娘は村の若衆のもので、他村の若者が村の娘を所望する時は、若衆達に渡りをつけなければならぬ習慣でありました。坊主のくせに、とんでもない奴だと村人達の憤りはひどく「殺してしまえ、生埋めにしてしまえ」と、地下の寺近くの道に、とうとう生埋めにしてしまいました。 村人達は、憤りのあまり生埋めにしてしまったものの、まだ若い者を可愛そうなことをしたと思い、また悪いことをしたとはいえ、仏に仕える坊さんを殺してしまって、その怨霊に祟られてはという者もありました。みんな崇りを怖れるとともに、現世では悪いことをしても、あの世に行ったらよい人になり、仏達の先達になってくれるようにと念じ、石地蔵を建てたという。西念地蔵はこうした話が伝えられています。