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御祈願は雷神社へ

〒289-2616 千葉県旭市見広1371番地

夏方おせんHEADLINE

 昔、夏方という処に、おせんという狐と源左衞門狐という悪狐がいました。時々松ケ谷や岩井の方迄荒らしに来ると云われて、清滝などでは台の畑に夜畑打ちに行くものではないと恐れられていました。 或時、それは夏方の近くの事でありました。一人の男があまりよい月夜なので、夜畑打ちに行きました。大豆を引いたあとに大根を蒔こうと思いました。昼のうちは暑いが、月夜で昼間のように明るく、せいせいしていて耕しもはかどった。 一寸ひと息入れていると、近所の人が少しはなれた処まで来て「お婆さんが今死んだからすぐ戻ってくるように」とどなって帰って行きました。「今俺が家を出かけてくる時丈夫でいたんだがな、そんな事はない筈だが」と不審に思った。しかし迎いが来たのだから戻らなければと帰り支度をしていたら、山の方で葬儀の出立ちの音がして、それがこちらに来る様子であった。これはおせん狐の仕業に違いないと思い、松の木の上に登って見ていると、編笠をかぶった大勢の葬式の行列が通り過ぎていった。 其の後も葬式に出られたという人が多くあったが、或人が葬式の真中に鉄砲を打ったら、大勢の人は消えてなくなり、一匹の古狐が頭を打ちぬかれて死んでいました。これは源左衞門狐でありました。おせん狐はその後常陸の国に逃げていってしまい、そっちで又悪いことをしたそうであります。 《注》 「夏方」は香取郡神代村夏方(東庄町)