昔、長山に長山オジイと云うのが居ったという。それは大きな蛇で、長さ九尺もあるような大きさで、めったに人に姿は見せなく、ことに頭は見せなく、見た者は少なかったという。人には危害をしなかったということです。
また岩井に小仲野オジイという蛇がいて、これも大きなものであったが、人には危害をしなかったという。 或時村人が谷津田に行こうとして荷鞍馬に乗って行ったら途中で急に馬が歩かなくなりました。馬の尻を手綱で叩いても歩かないので、尿でもするかと待っていたが、尿をする様子もなく、後ずさりをする。不審に思い、鼬でもいるのかと前を見たが何も見えないので、馬より下りて手綱を引いて行こうと馬の先に立つと、少し前の路を横ぎって、大きな蛇が静かに動き出した。これが小仲野オジイで、長山オジイよりは見かけた者が多かったということです。小仲野オジイはずっと昔からいて、それは二代目だとか三代目だとか云われていました。