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御祈願は雷神社へ

〒289-2616 千葉県旭市見広1371番地

小僧に化けた狢HEADLINE

 むかし、むかし、清滝村に作爺さんという人がありました。
 或る日のこと松ケ谷村に用事があって、そう遠い所でもないので、午後遅くなって出かけて行きました。二軒程用たしをしていたら夕方になってしまいました。雨が降り出しそうな空模様なので暗くなるのも早かった。提灯をかりて来る程の時刻でもなかったが、岩井境まで来た時は足もとが暗くなってきました。中標坂を下りようか、それとも意休坊坂にしようか、水神坂にしようかと少し考えました。中標坂は一番道は良いが遠廻りであるし、意休坊坂は道が悪かった。水神坂は一番近いが急でもあるし、木が茂って暗かった。それに砂かけどうかがいるとか、狢が出るとか、そんな話がありましたが、作爺さんは歳をとっているので、狢なんか恐ろしくもありませんでした。  どうせ暗くなったのだから一番近い水神坂を下りることにして足もとに気を付けながら、中程まで下りて来ると、路の真中に小さな男の子らしいのがしくしく泣いているような様子なので、「どうしたか」と声をかけても、目に手をあてて鼻すすりをするばかりで何とも言わない。通り過ぎようとして近より、後ろから目をこらしてよく見ると、尻尾らしいのが見えたので、噂のある人に化けて出る狢にちがいない思い、着ていた着物を一枚脱いで頭からかぶせた。あばれるので下駄で力まかせに打ったら靜かになったので、着物にくるんで清滝まで下りて、近くの家によって灯で見たら、大きな狢であったということです。