むかし、むかし、岩井の村に宇七爺さんと云う大へん心のやさしい年寄りがありました。生きものは何でも可愛がりました。 或日のこと、山の方の畑に野菜を取りに行きましたら、芋穴の中で何か声がするので覗いて見ると、一匹の狐の仔が落ちていました。「可愛そうに、落ちて上がれないのか」と狐の子に言いながら、早速上げてやったら、よろこんで山の中へ入って行きました。
その翌朝のことでありました。お爺さんは早くから目をさましていましたが、家内の者がまだ誰も起きないので寝ていたら、庭のあたりで狐の声が一声しました。はて、確に狐の声だなと思っていると、こんどは軒近くで一声なきました。もう夜が明けていたのでお爺さんは起きてみると、狐の姿は見えなかったが、縁側にたくさんの瓜が置いてありました。
昨日助けてやった仔狐の親が、お礼に持って来てくれたということです。